息を潜めて見守るシンジュは、その息苦しさに喘ぐことも出来ないでいた。
「なぁ、カイリ。お前はシンジュちゃんのことを好きなのか?それともただの遊びや執着か?」
沈黙を破ったアルフォードの言葉にシンジュはドキリとした。
それはずっとシンジュが聞きたかったことだった。
もともとはカイリとは海賊船に乗せてもらう代償として、体を差し出していただけの関係だ。
それを『遊び』や『執着』だと言われても当然で、それ以上であるはずがないのだ。
それなのにカイリがシンジュを求める気持ちが、自分と同じものであって欲しいと望んでいる。
自分から手を離したくせに今でもそんなことを考えているなんて、自分はなんと身勝手なんだろう。
(違う。僕にはアルフォードさんがいる。カイリがどう思っていても、そんなのは関係ない)
シンジュは自分に言い聞かせるように小さく頭を振った。
「本気で好きじゃないなら、このまま去ってくれないか。シンジュちゃんは俺が幸せにする。シンジュちゃんにとっても、海賊船に乗るより俺とここで暮らした方が幸せだろ?」
そんな自分に対して、アルフォードは真摯にシンジュを想ってくれている。
大切な友に「去ってくれ」と告げてまでシンジュの幸せを考えてくれる。
そんなアルフォードの気持ちを思うと、今だにカイリに気持ちを残していることがとても不誠実に感じて落ち込む。
「俺は真剣にシンジュちゃんが好きなんだ」
「何が真剣だ。誰にも本気にならず、誰とでも寝ていたのはお前だって同じだろ」
「あの頃とは違う!本気で人を好きになったのは、シンジュちゃんだけだ。だから…、頼むから、シンジュちゃんを連れて行かないでくれ」
鼻で笑うカイリに声を荒げたアルフォードは、最後にはカイリに懇願していた。
そんなアルフォードの姿にカイリが息を呑んだのが分かった。
カイリにもアルフォードの本気が伝わったのだろう。
こんなにも強い気持ちでアルフォードが自分を想ってくれていることを改めて感じ、シンジュは自分の気持ちを振り返った。
彼のこの想いに自分はきちんと応えることが出来るのか。
アルフォードを好きだと思う気持ちは嘘ではないが、カイリとのことで逃げている今の自分はきっとアルフォードを裏切っている。
アルフォードと向き合うためには、その前にカイリと向き合うべきなのだろう。
そしてそれよりももっと前に、自分の気持ちとも向き合わなくてはいけなかったのだ。
それからでないとアルフォードに対して失礼だ。
優しいアルフォードにただ甘えて身を委ねているだけでは、アルフォードを本当の意味で安心させてあげることは出来ない。
けれどもやっぱり怖い。
全てのことに向き合い答えが出た時に、今までの自分でいられる自信がないのだ。
再び沈黙が流れていた。
「悪いがそれは出来ない」
躊躇うようにカイリは声を吐き出した。
ここからは見えないけれど、カイリの顔もその声と同様に苦しげに歪んでいるのだろう。
「約束したんだ、きっと迎えに来るって。だからシンジュは俺が連れて帰る」
それでも続く言葉は、はっきりとそう言った。
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