FC2ブログ

海賊船の恋83

「約束…?」

アルフォードから訝しむ声が出る。
シンジュも首を傾げるが、カイリの言う約束を思い出せない。
けれどなぜか『きっと迎えに来る』と言う言葉が胸に引っかかった。

「あっ…!」

そして思い至った記憶。
驚きのあまり思わず声をあげてしまい、シンジュは慌てて口を押さえた。
けれどそれはすでに遅く、2人の視線が自分へと向いているのが扉の隙間からでも分かる。
シンジュは思い出していた。
幼い日の微かな記憶、温かい思い出。
たった1度しか会ったことのない大きくて優しい『お兄ちゃん』の言葉は、幼いシンジュの脳裏に鮮明に焼き付き生きる糧になっていた。
いつしかそれがその場限りの約束だったのだと気付いても、それでもシンジュはその日が来ることを夢見てあの孤児院での生活に耐えていたのだ。
それがカイリの言う約束と重なる。
それは一体どういうことなのだろうーー?

「シンジュちゃん、こっちにおいで」

アルフォードがシンジュのそばまで来て、そっと扉を開ける。
2人の会話を盗み聞きしていたシンジュは、ばつが悪くて2人の顔を見れず俯いた。
立ち尽くすシンジュにもう一度おいで、と声を掛けアルフォードはその肩を抱く。
シンジュは躊躇うように首を横に振ったが、アルフォードは優しく微笑み中へと促した。
部屋には逆に、険しい表情のカイリが腕を組んでソファに座っている。
その視線が怖くてシンジュは更に身を縮めた。

「カイリ、そんな顔してるとシンジュちゃんが恐がるだろ」
「…アルフォード」
「いいだろ?シンジュちゃんにも聞く権利はあるはずだ」

きっぱりと言い切ったアルフォードは、シンジュは自分のものだとカイリに見せつけるように隣に座らせ肩を抱き寄せた。
そんなアルフォードをカイリが睨む。
静かな青白い炎が2人の間に見えるようで、シンジュはすっかり畏縮してしまっていた。
小さな体を更に小さくして座るシンジュをアルフォードは優しく、カイリは厳しい顔で見つめる。
その対極的な2人に挟まれては、シンジュが無意識にアルフォードへ寄り添ってしまっても仕方がないだろう。
それが余計にカイリの眉間の皺を深くするのだが、その悪循環は止められそうになかった。

「それで?約束って何なんだ?」

溜め息を一つ吐いたアルフォードはカイリを呆れたように見遣り、ようやく話を切り出した。
シンジュもアルフォードに倣いカイリに顔を向けると、じっとシンジュを見つめるカイリの黒い瞳と視線が絡み合った。
どくん、と心臓が大きく音を立てて跳ねたような気がした。
ずっと自分だけを見ていた瞳。
それが続く思っていた。
けれど今はその先にサラがいる。
その事実を再び思い起こされてシンジュの胸は苦しいのに、それでも再び見つめられることが嬉しくもあった。

(嬉しい?そんなはずない。そんなの…、おかしいよ)

カイリと離れることが出来、アルフォードと穏やかな生活を送ることが自分にとっての幸せだ。
シンジュは自分の気持ちを否定して、カイリから視線を外した。
そして隣のアルフォードの胸に顔を埋めるのだった。



next
back



ポチしてもらえたら嬉しいです。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

4 comments

非公開コメント

0 trackbacks

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)